最終更新日: 2026年8月28日
eTransporter(イートランスポーター)は、株式会社NSDが提供する法人向けのファイル転送システムです。クラウド版(SaaS)と、自社サーバーに入れるオンプレミス版の2つから選べます。サッポロビール・三井住友建設・ダイフク・アズビル・NTTコムウェアなど、大企業と官公庁への導入実績が並ぶ製品です。
検討している方が先に知っておくべき点を2つ書きます。1つは、料金が公開されていないことです。今回確認した公開ページの範囲では、クラウド版もオンプレミス版も金額の記載が見当たらず、問い合わせて見積もりを取るまで総額が分かりません。公式サイトには「料金プラン」へのリンクが残っていますが、2026年8月28日に開いたところ404でした。もう1つは、「無制限」という言葉の中身がオンプレミス版とクラウド版で違うことです。オンプレミス版は送信ファイルサイズも公開期限も本当に無制限に設定できますが、クラウド版は「契約プラン内の容量であれば」という条件が付きます。
この記事はギガワタス(giga-watasu.jp)の運営ブログです。当社もファイル転送サービスを提供しているので、eTransporterは競合にあたります。そのうえで先に書いておくと、eTransporterが当社より明確に優れている点が4つあります。オンプレミス提供があること、送信ファイルサイズと公開期限を無制限まで設定できること、決められた宛先以外への送信を禁止できること(送信先ホワイトリスト)、そしてAD/LDAP・SAMLでの社内認証連携ができることです。当社はこの4つをいずれも持っていません。第三者認証については、NSDが会社としてISO/IEC 27001の登録を持っている一方、当社はプライバシーマーク(登録番号10800077-02)だけでISO/IEC 27001も27017も27701も未取得です。ただしNSDのISO/IEC 27001は登録範囲が特定の2つの課に限定されており、eTransporterがその範囲に入るかは公開情報からは特定できませんでした(本文で詳しく書きます)。本記事は2026年8月28日に、公式サービスサイトのトップ・機能・利用形態(クラウド版/オンプレミス版)・活用シーン・導入事例一覧・よくあるご質問の全カテゴリ・契約者向けサポートページ・無料トライアル申込ページを直接確認し、ISMS-ACとJIPDECの公的登録簿で認証を照合して作成しています。
eTransporterとは?運営会社NSDと2つの提供形態
eTransporterは、メールに添付できない大容量ファイルや機密性の高いデータを、企業間で送受信するための専用システムです。オンラインストレージのようにファイルを置きっぱなしにするのではなく、公式の言葉を借りれば「到達確認、サーバー上にファイルを残し続けない仕組み」を主眼にした、ワンタイムのファイル送受信に特化した製品です。

提供元の株式会社NSDは、公式のよくあるご質問によれば1969年創立、社員約3,500名で、そのうち8割以上がシステムエンジニアとプログラマという技術者集団です。コーポレートサイトで有価証券報告書・決算短信・株価情報を公開している上場企業でもあります。当社は従業員数の桁が違う中小企業なので、企業規模・設立年・情報開示の体制ではNSDが当社を大きく上回ります。そこは先に認めておきます(ただし企業規模は、個別製品が将来も提供され続けることまで保証するものではありません)。
製品としても現役で開発が続いています。契約者向けサポートページのリリース情報を見ると、2026年8月3日にVer.6.2.0がリリースされており、Ver.5系からVer.6.2.0まで更新履歴が並んでいます。サポート対象は「最新バージョンと過去2世代(小数点第1位の世代)まで」で、対象外になったバージョンも最新版の提供開始日から1年間はサポート対象として扱われます。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 提供元 | 株式会社NSD(1969年創立・社員約3,500名) |
| サービス種別 | 法人向けファイル転送システム(ワンタイム送受信特化) |
| 提供形態 | クラウド版(SaaS)/オンプレミス版の2種類 |
| 料金 | 非公開。クラウド版は月額費用のみ、オンプレミス版はサーバーライセンス+年間サポート。いずれも金額は見積もり |
| 登録ユーザー数 | 無制限(クライアントライセンスフリー)。公式はクラウド版についても「SaaS版でもユーザー数無制限」と明記 |
| 送信ファイルサイズ | オンプレミス版は無制限。クラウド版は「契約プラン内の容量であれば送信ごとの上限なし」 |
| ファイル公開期限 | 99日、無期限(オンプレミス版のシステム制限値) |
| データ保管場所 | クラウド版は国内のデータセンター。サーバーリソースは専有環境 |
| 導入までの期間 | 問い合わせから標準的に約1カ月 |
| 無料トライアル | あり(評価サイト。制約は本文参照) |
| 最新バージョン | Ver.6.2.0(2026年8月3日リリース) |
出典: eTransporter 公式サイト/よくあるご質問/オンプレミス版 利用形態(2026年8月28日確認)
eTransporterの料金は非公開|見積もりでしか分からない
結論から書くと、今回確認した公開ページには、eTransporterの金額の記載が見当たりませんでした。公開されていたのは料金の「体系」だけです。よくあるご質問のライセンス欄には、オンプレミス版がサーバーライセンス(ソフトウェアライセンス)+年間サポート、クラウド版が月額費用のみ、と書かれています。それ以上の数字はありません。
調べる過程で1つ分かったことがあります。無料トライアル申込ページのヘッダーメニューには、いまも「料金プラン」というリンクが残っています。リンク先は /service/etransporter/price/on-premise/ ですが、2026年8月28日に開いたところHTTPステータス404、ページタイトルも「Nothing found」でした。/price/ と /price/cloud/ も同じく404です。過去に料金ページがあった痕跡は残っているものの、現在は公開されていない、というのが確認できた事実です。なぜ取り下げたのかは公開情報からは分かりません。
オンプレミス版については、導入までの流れが「事前確認 → お客様ご要件のご確認・概算お見積り → ハードウェアサイジング・詳細お見積り」と段階的に説明されています。つまり概算と詳細で2回見積もりを取る前提の売り方です。公式は導入まで標準で約1カ月と説明しているので、標準的な流れで進める限り、今週中に本番で使い始めるのは難しそうです(個別に短縮できるかは問い合わせが必要です)。
標準機能とオプション機能の切り分けが見積もりを左右する
eTransporterで見積もりを取るときにいちばん効くのが、どこまでが標準で、どこからがオプション(追加費用)なのかの切り分けです。公式の機能ページは基本機能・システム連携・オプション機能の3つに分けて掲載しています。なお公式は各オプションの価格を公開していないため、「オプション=追加費用」は断定ではなく推定です。ただしオンプレミス版の事前確認欄には「eTransporter ウィルスチェックオプション 年間ライセンス」という別立てのライセンス名が明記されており、少なくともウィルスチェックについては別ライセンスとして扱われていることが読み取れます。
| 区分 | 含まれるもの |
|---|---|
| 基本機能 | ファイル送信/ワンタイムファイル受信/ユーザー・システム管理/認証・不正アクセス対策/誤送信・情報漏洩対策/証跡管理(送受信履歴ログ) |
| システム連携 | API/AD・LDAP連携(シングルサインオン対応)/メール誤送信対策ソフト CipherCraft/Mail との連携 |
| オプション機能 | メール連携(添付ファイルの自動URL化)/SAML連携/ウィルスチェック/アーカイブ/上長承認 |
| 標準に含まれないもの | SSL通信用のサーバー証明書(公式が「標準のライセンスに含まれておりません」と明記)/画面デザインのカスタマイズ(ロゴ差し替えは対応、デザインは標準構築作業に含まず) |
ウイルスチェックと上長承認がオプション扱いである点は、見積もりを取る前に必ず確認しておきたいところです。脱PPAP対策で検討している場合、この2つを要件に入れる会社は少なくないはずです。ウィルスチェックオプションはウイルス対策エンジンにSophos Anti-Virus Interface™を使っており、Sophosのユーザー登録が別途必要になります。またこのオプションはCentOSに対応していません。
プラットフォームによって使えるオプションが割れる点も、オンプレミス版では効いてきます。公式の記載ではメール連係オプションはLinuxのみ対応、ファイルサーバー連係オプションはWindowsのみ対応です。両方を使いたい場合はサーバー構成の段階で相談が必要になります。
「ユーザー数・ファイルサイズ無制限」はどこまで本当か
eTransporterが選ばれる理由として公式が真っ先に挙げているのが「ユーザー数・送受信ファイルサイズ無制限」です。ここは誇張ではなく、オンプレミス版のシステム制限値としてきちんと表で公開されています。ファイル転送サービスの比較では珍しいくらい正直な出し方です。
| 項目 | 制限値 |
|---|---|
| 送信ファイルサイズ | 無制限 |
| 登録ユーザー数/グループ数 | いずれも無制限 |
| 送信先アドレス・グループ指定数 | いずれも無制限 |
| 同時送信ファイル数 | 無制限 |
| ファイル公開期限 | 99日、無期限 |
| ダウンロード回数 | 99回、無制限 |
| ディスクサイズ | ハードウェア・OSの制限値 |
ただし読み方には注意が必要です。「送信ファイルサイズ無制限」はソフトウェア側が上限を設けていないという意味であって、実際に送れる量が無限という意味ではありません。公式自身も表の下に「送受信できるファイルサイズは、PCやサーバー、ネットワーク機器など、ネットワーク環境における最大サイズの制限にも依存します」と注記しています。ディスクサイズが「ハードウェア・OSの制限値」となっているのも同じ話で、実際の上限は用意したサーバーで決まります。
そしてクラウド版では条件が変わります。公式のクラウド版ページの表記は「契約プラン内の容量であれば、送信ごとのファイルサイズ上限値もなし」です。つまり1回あたりの上限は無いが、契約した容量が天井になります。その契約容量が何GBでいくらなのかは公開されていないので、クラウド版で実際にどれだけ送れるのかは見積もりを取るまで確定しません。ここは「無制限」という言葉だけで判断すると誤解する部分です。
参考までに当社ギガワタスは、無料・登録不要で1ファイル333GB・最長111日です。オンプレミス版のeTransporterはこの数字を設定上は上回れます(無制限・無期限まで設定可能)。容量と保存期間の上限そのものを比べるなら、サーバーを自前で用意できる会社にとってはeTransporterのほうが上です。他社を含めた容量の比較は大容量ファイル転送サービスの比較記事にまとめています。
eTransporterのセキュリティと第三者認証
セキュリティ機能は、誤送信対策とアクセス制御に厚みがあります。公式のよくあるご質問から確認できた内容を整理します。
- 誤送信対策: ダウンロード用URLの通知先とパスワードの通知先を別々に設定できます。「URLは受信者宛」「パスワードは送信者宛」にすると、送信者自身がパスワードを転送する前に宛先を見直すことになり、セルフチェックが働きます。誤送信に気づいた場合は「ファイル公開取り消し」で対応できます。
- 送信先の制限: 管理者が設定することで、ユーザー単位に決められた送信先以外への送信を禁止できます。この宛先ホワイトリストは当社にはない機能です。
- アクセス制限: 特定のIPセグメントからのアクセスを禁止する、逆に特定のIPセグメントに限定する、といった制限をユーザーやグループごとにかけられます。
- 証跡: 送受信履歴をログに残すのは標準機能です。実際に送信されたファイルそのものを証跡として残すには、アーカイブオプションが必要です。
- 暗号化: ファイルがサーバーにアップロードされた際に自動的に暗号化「することができます」と書かれています。ただし方式(AES-256などの具体名)は公開されておらず、詳細は問い合わせ扱いです。暗号化方式が要件に入っている場合は、営業担当に確認が必要です。
1点、判断に迷った記述があるので両方書いておきます。よくあるご質問の「クライアントに何かソフトをインストールする必要がありますか?」への回答に、「サイズの大きなファイルを送信する場合、お使いのブラウザーによってはJavaアプレットが動作する環境が必要となります」という一文が残っています。一方でオンプレミス版のクライアント動作環境ページには、推奨ブラウザーとしてWindowsはEdge・Chrome・Firefox、MacはSafari・Firefoxが挙がっているだけで、Javaに関する記載はありません。主要ブラウザは2015年から2017年にかけてJavaアプレットの実行基盤(NPAPI等)を廃止しているため、この記述は過去のバージョンのものが残っている可能性が高いと考えられますが、公式が明示的に取り下げてはいないため、断定はしません。実際に必要かどうかは問い合わせで確認してください。
認証を公的登録簿で照合した結果
公式サイトの記載を信じるのではなく、ISMS-AC(情報マネジメントシステム認定センター)とJIPDEC(日本情報経済社会推進協会)の公的登録簿で直接照合しました。2026年8月28日時点の結果です。
| 認証 | 照合結果 |
|---|---|
| プライバシーマーク | 登録あり。株式会社NSD/登録番号11820166(枝番13)/有効期間2026年10月11日〜2028年10月10日 |
| ISO/IEC 27001(ISMS) | 登録あり。認証登録番号I299/初回登録2012年6月28日/認定番号ISR002/JQA-IM0663。ただし登録範囲は「社会基盤事業本部 第一事業部 システム5部3課/システム6部1課」に限定 |
| ISO/IEC 27017(クラウドセキュリティ) | ISMS-ACの登録簿に該当なし |
| ISO/IEC 27701(PIMS) | 登録簿の検索が応答せず、今回は照合できませんでした |
照合先: ISMS-AC ISMS認証取得組織検索/ISMSクラウドセキュリティ認証取得組織検索/JIPDEC プライバシーマーク付与事業者検索(2026年8月28日確認)
ここは正確に書きます。プライバシーマークは会社として取得済みで、枝番13は更新を13回重ねてきたことを示します。長く運用している証拠です。ISO/IEC 27001も取得済みですが、登録範囲が特定の2つの課に限定されており、eTransporterを提供している部門がこの範囲に含まれるかどうかは公開情報からは特定できませんでした。登録範囲を「eTransporter」で検索しても該当はゼロです(同じ方法で「ファイル転送」を検索すると別会社が1件ヒットするので、検索方法自体は機能しています)。
つまりISO/IEC 27001については「未取得」でも「本サービスが認証範囲内」でもなく、「どの登録が本サービスを直接カバーするのかは公開情報からは特定できない」というのが正確な答えです。要件に含まれる場合は、営業担当に登録番号と適用範囲を確認してください。ISO/IEC 27017については、ISMS-ACの登録簿には見当たりませんでした。ただしこの登録簿にはISMS-AC認定の審査機関で取得した認証しか載らないため、海外認定機関で取得している可能性は残ります。
もう1つ補足を。NSDのコーポレートサイトの「データプライバシー&セキュリティ」ページには、情報セキュリティ基本方針・管理体制・社員教育・脆弱性診断の実施などが詳しく書かれている一方で、ISMSやプライバシーマークの取得を掲げる記述はありませんでした。登録簿のほうが公式サイトより多く語っている、という珍しい形です。この点は、認証取得を大きく掲げる同業他社とは対照的です。
当社の認証状況も書いておきます
当社(株式会社グッドヒルシステムズ)が保有しているのはプライバシーマーク(登録番号10800077-02、審査機関JIPDEC)だけで、ISO/IEC 27001・27017・27701はいずれも未取得です。NSDにはプライバシーマークに加えて、特定の2課を登録範囲とするISO/IEC 27001の登録があります。当社はプライバシーマークのみです。登録範囲が違うので単純な個数比較はできませんが、当社に27001の登録が無いことは事実です。当社のセキュリティ設計についてはセキュアなファイル転送サービスの選び方で説明しています。




