最終更新日: 2026年6月18日
結論から言うと、脱PPAPソリューションは「メールの運用を変えるか/ファイルの受け渡しごと変えるか」で4つのタイプに分かれます。大容量や社外への受け渡しが多いならファイル転送・クラウド共有タイプ、いまのメール運用を変えたくないなら自動リンク化ゲートウェイが有力です。
この記事では、ファイル転送サービスを運営する立場から、脱PPAPの代替手段を4タイプに整理し、共通の基準でスコア化して比較します。特定の製品を推すのではなく、自社に合うタイプの選び方がわかる構成にしました。
※ この記事は大容量ファイル転送サービス「ギガワタス」の運営ブログです。公平性のため評価基準を先に公開し、自社サービス(ギガワタスはタイプAの一候補)のデメリットも明記しています。
【評価基準】本記事の脱PPAP比較ポイント
脱PPAPソリューションは、法人での実務を想定して以下の5項目×20点=100点満点で評価します。一般的なファイル転送比較で使う「無料プランの充実度」は、法人の脱PPAPでは重要度が下がるため、本記事では「導入のしやすさ・コスト」に置き換えています。
| 評価項目 | 配点 | 評価の観点 |
|---|---|---|
| セキュリティ強度 | /20点 | 暗号化方式、第三者認証(Pマーク・ISMS)、盗聴・誤送信への強さ |
| 受信者の手間 | /20点 | 相手のアカウント要否、開くまでの手順の少なさ |
| 導入のしやすさ・コスト | /20点 | 導入の手軽さ、初期・運用コスト、既存環境への影響 |
| 管理・統制 | /20点 | 送受信ログ、IP制限、受取フォルダ、ポリシー制御 |
| 大容量・実務対応 | /20点 | 送れる容量、日常業務での使い勝手 |
脱PPAPの代替手段は、大きく4つのタイプに分かれます。上記の基準で評価した4タイプの総合スコアを、まず全体像として確認しましょう。
| タイプ | 代表的な手段 | 総合スコア | 向く企業 |
|---|---|---|---|
| A ファイル転送・クラウド共有のリンク化 | ギガワタス/Box/DirectCloud/Microsoft 365・Google共有 | 86/100 | 大容量・社外への受け渡しが多い |
| B メール添付の自動リンク化ゲートウェイ | GUARDIANWALL/Active! gate SS ほか | 74/100 | いまのメール運用を変えたくない |
| D 秘密分散・専用受け渡し | 秘密分散 フォー メール/クリプト便 | 72/100 | 最高レベルの機密性が必要 |
| C メール暗号化(S/MIME・暗号化メール) | Microsoft 365の暗号化メール/S/MIME | 60/100 | メールだけで完結させたい |
スコアはあくまで「法人の一般的な実務」を想定した目安です。重視する項目によって最適なタイプは変わります。各タイプを詳しく見ていきましょう。
タイプA:ファイル転送・クラウド共有のリンク化(86点)
添付ファイルをやめて、クラウド上のファイルへダウンロードリンクを送る方式です。代表的な手段は、ギガワタス・Box・DirectCloud、Microsoft 365やGoogleの共有機能です。
| 評価項目 | スコア |
|---|---|
| セキュリティ強度 | 16/20 |
| 受信者の手間 | 18/20 |
| 導入のしやすさ・コスト | 16/20 |
| 管理・統制 | 16/20 |
| 大容量・実務対応 | 20/20 |
メリット:受信者はURLを開くだけで、アカウント登録は不要なことが多く、相手を選びません。数百GBの大容量にも対応し、パスワードや有効期限、IP制限、ダウンロード履歴を備えるサービスもあります。無料から始められる手段が多いのも強みです。
デメリット:リンクの誤送信や、社外共有が情報システム部門のポリシーで制限される点には注意が必要です。サービスによってセキュリティ機能の差が大きいため、選定が重要になります。
このタイプの製品選びは「法人向けファイル共有サービスの選び方」で7社をランキング比較しています。Microsoft 365での具体手順は「Microsoft 365で脱PPAPする方法」をご覧ください。
タイプB:メール添付の自動リンク化ゲートウェイ(74点)
メールに添付したファイルを、ゲートウェイが自動でダウンロードリンクに変換して送信する方式です。GUARDIANWALL(キヤノンマーケティングジャパン)、Active! gate SS(クオリティア)などが代表です。
| 評価項目 | スコア |
|---|---|
| セキュリティ強度 | 14/20 |
| 受信者の手間 | 16/20 |
| 導入のしやすさ・コスト | 12/20 |
| 管理・統制 | 18/20 |
| 大容量・実務対応 | 14/20 |
メリット:社員はこれまで通りメールに添付するだけで、システム側が自動でリンク化します。運用を変えずに全社一斉に脱PPAPできるのが最大の強みで、送信ログやポリシー制御など管理機能も充実しています。
デメリット:ゲートウェイ製品の導入が必要で、初期・運用コストがかかります(料金は要問い合わせのことが多い)。メール経由のため、数十GB級の超大容量には向きません。
タイプD:秘密分散・専用受け渡し(72点)
ファイルを複数の断片に分割して別々に保管する「秘密分散」や、専用システムでの受け渡しを行う方式です。秘密分散 フォー メール(日立システムズエンジニアリングサービス)、クリプト便(NRIセキュアテクノロジーズ)などが代表です。
| 評価項目 | スコア |
|---|---|
| セキュリティ強度 | 20/20 |
| 受信者の手間 | 12/20 |
| 導入のしやすさ・コスト | 8/20 |
| 管理・統制 | 18/20 |
| 大容量・実務対応 | 14/20 |
メリット:万一データが流出しても、必要数に満たない断片だけでは復元できないため、4タイプの中で最も高いセキュリティ強度です。金融・官公庁など、極めて高い機密性が求められる場面に向きます。
デメリット:受信者に専用の受け取り手順をお願いすることが多く、相手の手間が増えます。コストも高めで、導入のハードルは4タイプの中で最も高くなります。
タイプC:メール暗号化(S/MIME・暗号化メール)(60点)
メールの本文と添付ファイルを暗号化したまま送る方式です。S/MIME(電子証明書による暗号化)や、Microsoft 365の暗号化メールなどがあります。
| 評価項目 | スコア |
|---|---|
| セキュリティ強度 | 16/20 |
| 受信者の手間 | 12/20 |
| 導入のしやすさ・コスト | 12/20 |
| 管理・統制 | 12/20 |
| 大容量・実務対応 | 8/20 |
メリット:メールの送受信だけで完結し、別のサービスを使わずに済みます。暗号化メールなら受信者はワンタイムパスコードで開けるため、比較的手軽です。
デメリット:S/MIMEは送受信の双方に電子証明書が必要で、相手の準備に依存します。いずれの方式もメールの添付容量制限に縛られるため、大容量ファイルには使えません。Microsoft 365の暗号化メールは上位ライセンスが必要な場合があります(利用可否は最新のMicrosoft公式情報でご確認ください)。
【結論】自社に合う脱PPAPソリューションの選び方
「結局どれを選べばいいのか」を、用途別にまとめました。
| こんな企業 | おすすめタイプ | 理由 |
|---|---|---|
| 取引先への大容量送信が多い | A ファイル転送・クラウド共有 | 数百GB対応・受信者はURLを開くだけ |
| 社員の運用を変えずに全社で脱PPAPしたい | B 自動リンク化ゲートウェイ | 添付するだけで自動リンク化・管理機能が強い |
| 金融・官公庁レベルの機密が中心 | D 秘密分散・専用受け渡し | 必要数未満の断片では復元不可・最高強度 |
| 小容量をメールだけで完結したい | C メール暗号化 | 別サービス不要・ただし大容量は不可 |
多くの中小企業にとって現実的なのは、導入が手軽で受信者を選ばないタイプAです。当社が運営するギガワタスもタイプAの一候補で、最大333GBの送受信・AES-256暗号化・IP制限・ダウンロード履歴・受取フォルダを備え、プライバシーマークも取得しています。法人での利用は法人プランに対応しています。
正直に書くと、ギガワタスにもデメリットがあります。
- 知名度が低い。歴史ある大手サービスに比べると、受取側に「知らないサービスだけど大丈夫?」と思われることがあります
- クラウドストレージのような永続保存はできない。期限付きの受け渡しに特化しているため、長期保管には向きません
タイプAの中でどの製品を選ぶかは「法人向けファイル共有サービスの選び方」を、社内での進め方は「脱PPAPの進め方|5ステップ」を参考にしてください。
よくある質問
Q. 脱PPAPは無料でもできますか?
できます。タイプA(ファイル転送・クラウド共有)には無料から使えるサービスが多く、添付をやめてダウンロードリンクに切り替えるだけで脱PPAPになります。ただし、無料サービスはセキュリティ機能や管理機能に差があるため、法人で使うなら暗号化方式や第三者認証(プライバシーマーク等)を確認して選びましょう。
Q. 金融庁や政府は脱PPAPについてどう言っていますか?
2020年11月、デジタル改革担当大臣が記者会見で、内閣府・内閣官房での「PPAP(パスワード付きZIPを送り、直後に別メールでパスワードを送る運用)」廃止を発表しました。これを機に中央省庁や大手企業に脱PPAPが広がりました。金融機関でも、情報セキュリティの観点からPPAPを見直す動きが進んでいます。詳しい経緯は「PPAPとは|なぜ日本だけ広まったか」で解説しています。
Q. 一番おすすめの脱PPAPソリューションはどれですか?
企業の状況によります。取引先への大容量送信が多いならタイプA(ファイル転送・クラウド共有)、社員の運用を変えたくないならタイプB(自動リンク化ゲートウェイ)、最高レベルの機密性が必要ならタイプD(秘密分散)が向きます。まずは自社が「メール運用を変えられるか」「どれくらいの容量・機密性を扱うか」を整理するのが選定の第一歩です。
Q. Microsoft 365を使っていますが、追加ソリューションは必要ですか?
Microsoft 365だけでも、OneDriveの共有リンクや暗号化メールで脱PPAPは可能です。具体的な手順は「Microsoft 365で脱PPAPする方法」で解説しています。社外への大容量受け渡しや受取フォルダが必要な場合は、タイプAのファイル転送サービスを併用すると確実です。
まとめ
脱PPAPソリューションは4タイプから選びます。
- タイプA ファイル転送・クラウド共有(86点):大容量・社外受け渡しが多い企業に。受信者を選ばず導入も手軽
- タイプB 自動リンク化ゲートウェイ(74点):運用を変えず全社で脱PPAPしたい企業に
- タイプD 秘密分散・専用受け渡し(72点):金融・官公庁レベルの機密に
- タイプC メール暗号化(60点):小容量をメールで完結したい場合に
まずは「自社のメール運用を変えられるか」「扱う容量と機密性」を整理し、タイプを決めるのが近道です。大容量や社外受け渡しが多いなら、無料から試せるファイル転送サービスから始めてみてください。
この記事の情報は2026年6月時点のものです。各ソリューションの仕様・料金は変更される場合があります。最新情報は各公式サイトをご確認ください。スコアは法人の一般的な実務を想定した編集部の評価です。





